ビジョン・クエスト(インディアンの成人の儀式)

30代の頃、ビジョンクエストをやったことがあります。
ビジョンクエストとは、インディアンの成人の儀式です。
たった一人で荒野に行き、断食をし、結界を作り幾晩か過ごすのです。
インディアンは、夢をとても重視していて、その時見た夢から未来に繋がる啓示をもらうのです。
また、その時現れた動物が一生の守護動物となります。
例えば、ワタリガラスやオオカミなどです。
夢や精霊や動物たちから様々なメッセージを受け取る、大人になるための重要な儀式です。


私のビジョンクエストは、西伊豆の山で行われました。
いちばん怖い場所を選んで下さいという指示だったので、鬱蒼とした谷の竹林にしました。
その日は、大雨でした。
冷たい雨が体温をどんどん奪っていきます。
急いで、小石で結界を作りました。
これから二晩、自分自身と向き合うのです。
風でゆさゆさ揺れ動く真っ暗な竹林は、まるで巨大な鳥かごのようでした。
それは私にとって気が狂いそうなほど、怖ろしい場所でした。
「○○○ーーーー、○○○ーーー」
私は、夫の名前を叫び続けました。
頭がくらくらして、喉が枯れるほど叫び続けました。
そして、気付きました。
こうやって、夫に助けを求めてばかりいると、夫は私のために死んでしまうかもしれない、、、。
なぜだか、そう思ったのです。
寒さに震えながら、夜を明かしました。
地面はぬかるんで、谷を昇っていくことは困難でした。
私は、遭難してしまうかもしれない!
それほど過酷でした。
やっとの思いで、里に着き、病院に運ばれました。
大雨で低体温になっていたのですね。
絶食をしていたのに、吐いて吐いて吐きまくりました。
思えば、私の30代は自己探求に夢中でした。
古神道、内観、ヴィパッサナー瞑想、TM瞑想、ドリームワーク、、、、
自分の潜在意識に深く深く入っていきました。
それでも、自分を愛することにかすりもしませんでした。
不思議な一瞥体験はいくつかありましたが、
「自分を愛する」ということがどうしてもできなかったのです。
そして、皮肉なことに、夫の癌が私の目を覚ましてくれました。
どこかに行かなくても、何かを学ばなくても、
いちばん身近な場所に、私の探していたものはあったのです。
夫との関係を、きちんと見ていれば良かったのです。
家族との関係はどうか、、、もう一度見直すといいかもしれません。
身近なところに、自分自身がはっきりと現れています。

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。