癌見つかる 6

「フライングしないようにしないとね。
急いで手術したらたいへんなことになる。
慎重に術前の検査をやっていきます。」
たぶん、グリオーマに関して日本でいちばんの名医と言われる主治医が言った。


夫の悪性脳腫瘍は、右側頭部の海馬付近にあった。
大きさは4センチ以上はあった(正確には、4×5×3,5という感じだった)
何がフライングしちゃいけないかというと、
取り過ぎると、重篤な後遺症が出る部分だからだそうだ。
海馬といえば、認知症に関係する部分だ。
短期記憶(さっき言ったことをすぐ忘れるっていうやつ)、
それから、相貌失認(相手の表情から、感情を読み取れなくなったり、
はては、誰を見ても同じ顔に見えるというか、誰が誰やらわからなくなる!)
たいへんに、ヤバイ場所なのだ。
しかも、目は確実に両眼とも、半盲か1/4盲になる、、、。
それだけじゃないんだよー。
夫は、生後7カ月の時に階段から転げ落ちて、
左脳が壊死している。
その後遺症で、右半身が片麻痺で、言語障害による吃音なのだ。
つまり、今だって、障害者手帳を頂いている障害者なんだ。
それなのに、それなのに、、、、、、
今度は右脳がやられるんですか、神様!
夫は、だるまになっちゃうよ。
悪い冗談は、よして下さい、神様ー。
人生にこんなピンチがやってくるとは思ってもみなかったよ、、、。
私たち夫婦が、どんな悪いことしたっていうんだ。
ただひたすら真面目に鍼灸師と柔道整復師をやってきただけ。
たくさんの人の身体を治すお手伝いをしてきただけなのに、、、、。

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。