人生が与えてくれた2つの贈り物

8月29日、忘れられない日です。6年前のその日、夫の脳腫瘍が見つかりました。私はその前日、不思議な体験をしています。あの不思議な体験と夫の病気が関係があるのかないのかわかりませんが、それから私たち夫婦の人生は大きく変わっていってしまったのです。

 

6年前の8月28日、私は鍼灸の患者さんのところに往診に向かう途中でした。真昼間の荻窪の住宅街。なぜだか誰も歩いていませんでした。その時ふいに私は自分がとてつもなく幸せだということに気が付きました。何の根拠もなく、幸せ以上だと感じたのです。「至福ってこんな感じかなぁ・・・」幸せに包まれながら歩いていると、下半身がなくなっているような感じがしました。足元に目をやると、下からどんどん消えていっているのです。えっ!!!消えちゃう!!!私が消えるのは・・・自分が無くなってしまうのはまずいじゃないか!!!そして本能的に息を止めました。すると消えかかったからだは元通りになり・・・そこで私は一瞬で理解しました。「肉体をこの地球上に留めておくには重しがいる。それは悩みや問題だ。何らかのネガティブなものがないと・・そうだ、完全に幸せになってしまったら、この肉体は地球にはいられないのだ!」その不思議な体験をした次の日、夫が山登りで作った外傷を診てもらいに脳外科にいったところ脳腫瘍が発見されたのです。

 

人生はいじわるです。少しばかりの悩みで良かったのに・・・この地球に留めるためのかなり大きめの重しを私たちに与えてくれました。夫の脳腫瘍はグリオーマ。完治無しとも言われる脳に染み込むタイプのものでした。手術で半盲になり、認知も下がり、働けなくなってしまいました。・・・それから私は本気で人生に取り組まざるを得なくなりました。

 

 

しかし、これこそが恩寵だったのです。夫の病気がなかったら、私は自分のことばかり考える人間のままだったでしょう。20年前夫と結婚した時にふと思ったことがあります。その時夫の寝顔を見ていたら、なぜだか安らかな死に顔になったのです。「夫は私の肥やしになってくれるのだ。そして、夫と死別した時に私の本当の人生が始まるのだ。」幸せな新婚の時に、なぜだかふとそう感じてしまったのです。

 

私の大事なテーマの一つは「自立」でした。ずっと夫に依存していたのです。なんでも夫に聞いてからでないとやれませんでした。ところが今は夫に聞いても混乱するだけなので、何でも自分で決めていかなければならなくなったのです。いったいどうやって稼いでいけばいいのだろう、どうやって生きていけばいいのだろう・・・自分で治療院は営んでいたもののほとんど趣味的な感じだったのをきちんと経営していかなければならなくなったのです。

 

夫の病気で私は追い詰められました。しかし、これこそが贈り物でした。まず経済的なこと。どうやって食べていけばいいのだろう、どうやって生きていけばいいのだろう・・・考えているとだんだん絶望的な気持ちになってきます。借金しているわけでもないのにね(笑)このお金に対する不安というものと対峙することが出来たのは本当に良かったです。ある患者さんがおっしゃいました。「不安や恐怖は、人生にまったくいらないものです!」ご主人を亡くされたばかりのその方はそう力強くおっしゃいました。自分の妄想で殺されてはならないのです。それまでなんとなくやり過ごしてきたけれど、確実に自分の中にあった怖れの正体と向きあう機会を貰ったこと、これは夫からの1個目の贈り物です。

 

そして、2個目の贈り物は・・・自分のやりたいことをやれるようになったことです。私は20歳の頃から精神世界や悟り、ヒーリングなどを探求してきましたが、そういうことを人に言うことはありませんでした。おかしな人と思われるのが怖かったのです。本当はやりたくてやりたくてたまらなかったのですが、隠れ蓑として鍼灸師を選びました。それが夫の病気をきっかけに催眠療法やヒーリング、はてはコーマワーク(昏睡状態の人との対話)や意識領域の探索(亡くなった方とのコンタクト)などを開示するようになりました。そういう学びをしていくにあたり、素晴らしい教師の方々にも出会い、私本来の生き方に修正することが出来たように思います。

 

私はこう思います。人生はいつもその人に必要なものを必要なだけ与えてくれます。毎朝玄関の前に、自分の器を広げるための課題を置いていってくれます。それが絶望的に見えたとしても、やはり自分への贈り物なのだと。人生が夫という素材?を通して与えてくれた数々の贈り物に今は感謝の気持ちでいっぱいです。6年もかかったのは私の怖がりと頑固さのせいなんですけどね(笑)今これを読んでいるあなたは、こういうことはもっと早く通過してくださいね!!

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。