黄泉の国から・・・後編

夫は、土合駅の駅長さんの後をついていきました。

(今、あなたはどこにいますか?)

夫「駅長室だよ。」

(ロウソクはありますか?)

夫「あるよ。」

(自分の名前の書いてあるロウソクを探して下さい。名前がなくてもこれが自分のロウソクだと
わかるはずです)


夫「わかるよ。だって1本しかないもん。」

えーーーー。1本!?なんで?なんで?たーくさんのロウソクがあるんじゃないの~?
動揺を隠して・・・(そのロウソクは自分のですか?)

夫「そうみたい。」

(どうして、自分のロウソクだとわかるのですか?)

夫「駅長さんが、お前のだって言ってる。」

(なぜ、1本しかないのか駅長さんに聞いてみることもできますよ)

夫「自分のロウソクがあればいいんだろって言ってるよ。」

(はぁ・・・まぁ、そうですけど)

私は、夫の寿命が気になります。怖いけど聞いてみました。
(長さは、どうですか?)

当たり前というふうに、夫「長いよ。元気に燃えている。」

でも、他のロウソクがないと比較が出来ない・・・
(他のロウソクがないのに、どうして長いとわかるのですか?)

夫「長いとしかいいようがない。火はオレンジ、、いや白い強い炎だ!」

(太さはどうですか?)

夫「これくらい。」夫は両手を○にしました。ぶっといロウソクです。

(長さはどれくらいですか?)

夫「これくらい。」40~50cmはあるでしょうか?長いです。

(炎は勢いがあるのですか?)

夫「そう、温度が高いから白っぽい。バチバチって強いよ。」

もう何も聞くことはないかな・・・いや、夫のがんのことを聞いてみよう。
(なぜ、悪性脳腫瘍になったか、ロウソク自身に聞いてみることもできますよ)

夫「生きるため、だって。」

(なぜ、生きるために、死ぬような病になったのですか?)

夫「あのまま生きていたら、怒りで死んでいた。脳腫瘍は、生き方を変えるためだ。」

(そうですか?もう生き方は変わったか、ロウソクに聞いてみますか?)

夫「十分、変わったよって言ってる。」

夫の寿命が聞いてみたくなりました。

(ロウソクを見て、自分の寿命はわかりますか?パッと浮かんだ数字は?)

夫「83歳、えっそんなに生きるの?」

(では、ロウソクと駅長さんにありがとうと言って駅長室から帰りましょう)

夫の感想・・・「とってもリアルだったな、あのロウソク、あの炎・・・」

土合駅・・・日本一のモグラ駅と言われる、地下70メートルにある無人駅。
      486段の階段。まるで地下の国に続くような階段。
      降りるのに10分かかる。(怖ろしい駅ですね)

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。