癌見つかる 3

近所のH脳神経外科で、大学病院を4つ紹介された。
「できるだけ地の利がいいところがいいですよ。」と医師はいう。
「奥さんがたくさん通うことになるから。」だそうだ。
迷っている暇はない。夫はダウジングである大学病院に決めた。
インターネットで調べると、やっぱりそこが日本でいちばん脳腫瘍を手掛けている病院だった。
ところが、その大学病院の初診の日、夫は興奮して帰って来た。
「俺は、もう行かねーからな!」
何事かと聞いてみると、医師に罵倒されたというのだ。
その医師は、テレビにも出たことのある有名な方だ。
夫の順番は、その日の最後。無理やり診察をお願いしたのだった。
あれこれ質問をする夫に対して、
「私は、ずっと診察してるんだー。」と怒鳴ったらしい。
私はその場にいなかったので、事実はわからない。
夜8時過ぎ、先生もお疲れだったのだろう。
夫は自分の病気のことをあれこれ聞きたかったのだ。
聞きたかっただけなのだ。自分の命のことだから、、、。
当事者二人の思いは全然違っていたんだね。
ここで、その原因の一つを作ったのが、H脳神経外科の医師だ。
彼は「たぶん、良性じゃないかな、良性だと思う。」と言っていた。
その仏心が、かえってややこしくしたのだ。
普通の脳外科医なら、見ただけで悪性ってわかるんじゃないかな?
最初から、はっきり
「これは命にかかわる病気だから、四の五の言ってる場合じゃないです。」
と、言ってもらってたら、
夫も、のったらくったら大学病院の多忙な有名医師にあれこれ質問しなかっただろう。
いや、してたかな。
とにかく、
命を預けなきゃいけない医師と、無知で無力な患者が
最悪の出会いをしたってことです。

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。