一言の力

私は20代の頃、過食症でした。
きっかけは、ささいなことでした。
劇団に所属していた私は、役作りのために体重を落とす必要があったのです。
学生時代からぽっちゃり体型で、あまり気にしてはいなかったのですが、
「真夏の世の夢」のパックという走り回るいたずらっ子の妖精役に抜擢され、
ダイエットをせざるを得なくなったのです。


体重は簡単に落ちていきました。
初めて見る自分のスマートな姿に、世界が変わりました。
しかしそのうち、太ることに恐怖を感じ、食べられなくなってしまったのです。
そしてある時、食べても吐けばいいんだと気付きました。
コンビニに行き、パンやお菓子を買いこみ、一気に食べて、一気に吐く・・・
むなしい、悲しい行為でした。
いつしか、仕事や恋愛で上手くいかなくなると「食べ吐き」の癖が出るようになっていました。
それは、劇団をやめても続きました。
イライラすると、コンビニに走り、食べて、吐く・・・
当時の私にとっては、食べることそのものが恐怖になっていました。
そんな生活が2年ほど続き、このままではいけないと思い始めました。
しかし、自分の力ではどうすることもできないように思えました。
そして、勇気を出し病院に行ったのです。
心療内科だったのか、今ではもう忘れましたが、
医師のあの一言はいまだに忘れることが出来ません。
一通り状況を話し、下を向く私に女性医師がこう言ったのです。
「吐きたい時は、吐いていいんですよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一瞬何と言われたのか、その言葉が理解できませんでした。
目から鱗が落ちるとはこのことでした。
「吐きたい時は、吐いていい。」
それまでは、吐いてはいけない、食べ吐きする自分はだめな人間だと
そんな思考でいっぱいでした。
それが、吐きたい時は吐いていいと医師は言うのです。
私は、肩の力が抜け、ぼおっとしたまま会計を済ませて帰りました。
ものごとは、本当に逆説的です。
やってはいけないと思うと、やりたくなる。
やっていいと言われると、やらなくなる。
一体あれは何だったんだろう、というくらい簡単に過食症が治りました。
本当に、人生は逆説的です。
そして、自分を縛っているのは自分でしかありません。
違う視点で見てみたら、あっという間に問題解決です。

お気軽にお問い合わせください。

当日申込みは空きがあれば受け付けます。
その場合は必ず電話連絡をお願いします。

TEL:090ー4435ー9483

この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。