「もう一度生きられたら」 

「もう一度生きられたら」
                        ナディーヌ・ステア
つぎの人生ではもっと誤りを犯したい。
リラックスしたい。
柔軟に生きたい。
この人生よりもおろか者でありたい。
もっとチャンスを手に入れよう。
もっともっと山に登り、もっともっと河で泳ごう。
アイスクリームを今よりたくさん食べて、豆類は少なくしよう。
きっと現実面でのトラブルは多くなるだろうが、
不安や思いすごしは少なくなるにちがいない。


ごらんのとおり、私は時を日についで、
かしこく、清らかに生きている大衆の一人だ。
ああ、自分だけの時がもてていたなら。
もし、もう一度生きてそうすることができたら、
たっぷり時間をもつことだろう。
つまり、ほかのことは何も試みまい。
毎日あくせくと生きて多年を過ごすかわりに、
ひとつ、またひとつと、
ただそういう自由な瞬間のみを。
私は温度計や魔法びんや、レインコートや、
パラシュートをもたずには、どこにもいかない人間だった。
もし、もう一度それができたら、
私は身がるに旅することだろう。
もし、もう一度生きることができたら、
まだ早春のうちにはだしで出かけよう。
そして、晩秋になっても、大自然のなかにとどまっていよう。
もっとダンスをしにいこう。
メリーゴーランドにもっと乗ろう。
ひなぎくをもっとたくさん摘もう。
  
           (ケンタッキー州ルーヴィル在住 85歳)
この詩は、ラム・ダスの「覚醒への旅」の中にありました。
ケンタッキーに住む85歳の女性の書いたものです。
なぜか、涙が出てきます。
小さい頃、人生というものに大いに希望を持っていました。
やるぞ!と意気込んでいました。
でも、いつの間にかどうしてだか、私はしぼんでいました。
臆病になっていたのかもしれません。
怠慢になっていたのかもしれません。
冒険をしなくなったのかもしれません。
親や先生や社会の刷り込みかもしれません。
でも、気付いたら、今ここから生き直せるのです。
50歳でも
60歳でも
70歳でも
80歳でも
90歳でも
今日が、「人生最後の日」と思って生きるのはどうでしょう。
今日だけ、です。
私にもあなたにも今日だけしかないと思って生きる、のです。

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。